幼い子どもがいわゆる「赤ちゃん言葉」を使う姿は微笑ましくてかわいいですね。でも、いつまでもしゃべり方が幼いままだと心配になるかもしれません。親はように対応したらいいのでしょうか。
幼児に見られる言葉についてみてみましょう。
「4歳半の息子です。「チャカナ(さかな)」「チェンチェイ(せんせい)」など、発音の間違いが多くて気になります。特にサ行の発音が上手くできません。このまま放っておいて大丈夫でしょうか?対応の仕方を教えてほしいです。」
今回は、このような相談にお答えします!
発音・言葉の発達について
子どもは言葉を発するようになると、「赤ちゃん言葉」と言われる形でおしゃべりを始めます。
幼児は構音機能(話し言葉の音声を生み出す機能)が十分に育っていないため、正しく発音ができません。そのため、幼児特有の舌足らずな話し方になるのです。「赤ちゃん言葉」には、「幼児音」と「幼児語」の2種類があり、「幼児音」がこれに当たります。
発音と言葉は、おおよそ以下の順番で獲得していきます。個人差がありますので、獲得段階にとらわれる必要はありませんが、一つの目安にしてみてはいかがでしょうか。
発音の獲得の目安 | 言葉の獲得の目安 | |
0歳 | クーイング・喃語 | |
1歳 | 初語・一語文 | |
2歳~ | ば行、ぱ行、ま行、や行、わ、ん | 語彙の爆発的な増加・二語文 |
3歳~ | 母音、た行、だ行、な行 | 文字への興味 |
4歳~ | か行、が行、は行 | 文字への興味・読みの習得 |
5歳~ | さ行、ざ行、ら行、つ・づ | 読み書き能力の習得 |
幼児音について
幼児音とは
ご相談の「チャカナ(さかな)」など、発声器官の未成熟と言語経験の少なさからくる発音の乱れを「幼児音」といいます。母音の完成が3歳頃、子音の完成が 7歳頃といわれています。
4歳くらいであれば、様子を見るに留めておいていいでしょう。
年長くらいになっても強く発音の不明瞭さが残っていたり、就学時健康診断で指導があったりした場合は、専門家に相談してみましょう。
主な種類
サ(ザ)行音の変化
オカチ(おかし)、ドウジョ(どうぞ)、チャカナ(さかな)など
音の乱れ
デキレル(できる)など
音の省略
トウモコシ(とうもろこし)など
音の置換
カダラ(からだ)、エべレーター(えれべーたー)など
子音の置換
コロモ(こども)、ダイオン(らいおん)など
対応のポイント
言葉の経験を積ませることと、正しい発音を聞かせることが重要です。
幼児音を安易に真似しない
周囲の大人は、正しい発音を聞かせてあげましょう。
子どもが話す幼児音はかわいらしいので、つい真似しがちですが、これは誤ったお手本を示すことになります。構音機能が育った後も幼児音の癖が抜けにくくなる恐れがあります。
また、うまく発音できないことを自覚している子にとっては、失敗を真似されているようで(本人にとって)よい気がしません。言葉を発することに自信をなくしてしまいます。
言い直しをさせない
構音機能が育っていないため、言いたくてもうまく発音できないのです。無理やり言い直しをさせることは逆効果です。
間違いを指摘しない
本人が言いたくて発音している言葉ではありません。子どもの気持ちに寄り添った対応が重要です。
幼児語について
幼児語とは
1歳前後~3歳頃の会話に用いられる言葉を「幼児語」といいます。
音声に意味が結びついた言葉で、周囲の人が乳幼児に話しかける時に使われることが多いです。
発音機能が未熟な幼児でも発音しやすい音を持つので、言葉に対する興味や理解を促すのに役立ちます。
主な種類
擬声語
ワンワン(犬)、ブーブー(車)、ピーポー(救急車)など
擬態語
ペッタン(貼る)、クルクル(回る)、パクパク(食べる)など
語頭音の長音化と反復
バーバー(祖母)、キューキュー(救急車)など
ん音便化
マンマ(ご飯)・ネンネ(寝る)・オンモ(外)など
っ音便化
クック(靴)・テッテ(手)・タッチ(立つ)、コッコ(にわとり)など
反復語
キレイキレイ(清潔にする)、ナイナイ(片付ける)など
別な言葉での表現
オツム(頭)、ウマウマ(ご飯)など
対応のポイント
子どもの発達レベルに合わせて、使う言葉を選ぶことが重要です。
言葉の発達を促すために活用する
幼児語は、乳幼児にとって聞き取りやすく言いやすい言葉です。言葉に親しむための手段として活用しましょう。言いやすい言葉を発しながら、「言葉って楽しい」ということを感覚的に味わわせてあげましょう。
子どもとのコミュニケーションの手段と活用する
聞き取りやすい音やリズムのある幼児語は、子どもの注意を引きやすくコミュニケーションがとりやすい言葉です。意味のわかる言葉を使いながら、人とのやり取りの楽しさを体験させてあげましょう。
2歳に入ったら切り替え始める
言葉が育ってきたら、少しずつ大人の言葉(正しい日本語)に切り替えていきましょう。切り替え時期は、自分から幼児語を使い始めた2歳頃がおすすめです。
「ブーブー、車が来たね。」など、会話の中に正しい日本語を入れながら、知らせていくといいでしょう。
最後に
言葉は、人と人との関わりの中で発達していきます。
今、上手に発音できなくても、親や先生、たくさんの友達と会話を重ね、周囲の人の正しい言葉や発音を聞く中で自然に直っていくことがほとんどです。
一番避けたいことは、子どもが話すことそのものに自信をなくすことです。無理に矯正しようとしたり、間違いを叱ったりするのは禁物です。
大人が、年齢に合わせた話し方と言葉の選択を意識し、言葉の発達を支えることが大切です。
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