日常生活でもよく使う算数。小学校入学後、すぐに授業が始まる大事な科目です。願わくば「算数好きな子」に育ってほしい、そう思いますよね。
「入学前に数くらいわかるようにしておきたい」そう思っても実際に教えようと思ったらいかがでしょうか。何歳から始める?塾に行かせる?ワークを買って解いてみる?いろいろ迷ってしまいますね。
「2歳3か月の子どもがいます。先日、同い年のお友達が数をスラスラ言うのを見て焦ってしまいました。やはり勉強を始めた方がいいですか?一度、ワークを買いましたが興味を示しません。家でできることがあったら教えてほしいです。」
今回は、このような相談にお答えします!
スタートは生活の中にある「数」に親しむことから
数の理解にも個人差があります。
ワークを否定するつもりはありませんが、いきなりの座学は少々無理があるかもしれません。
数は、日常生活のあらゆるところに存在します。幼児期は、体験による学びが効果的なので、生活の中で自然に数と出会い、親しむことから始めましょう。
1歳を過ぎたら、日常で目にしたり触れたりするもの(ブロック、おやつ、食器、時計の数字など)の数を声に出して聞かせてあげることがおすすめです。
この時点では、数が言えなくても、理解できなくても構いません。数を理解させるというより、「その先の理解のための種まき」というイメージですね。
「数の学習」や「算数への準備」と言うと、一気に「お勉強感」が高まり難しそうに思えますが、肩肘を張ることはありません。
まずは、身の回りに数がたくさんあることを知り、数って楽しそうだなという気持ちを引き出すことから始めましょう。
数と仲良くなることが、後の数の理解に役立ちます。
10まで言えることと10まで理解できることは違う
「1、2、3、4、5…10」と言えるのに、10個のアメの個数がわからない子がいます(アメを数えた後の「全部でいくつ?」の問いに答えられない子です)。
前者は数唱、後者は計数と言い、異なる力なんですね。
数唱は、数詞を順番通りに唱えることです。
「お風呂で、10まで数えたら湯船から出る」などがこれに当たります。
計数は、ものの数を正確に数えることです。
年齢の低い子どもでも100まで言える子はいます。
でも、必ずしも「数唱ができる=計数ができる」とは限りません。
計数は、 大人にとっては簡単に見えますが、 案外できていない子どもが多いです。
数の理解の基本ですが、 実は奥深く習得には様々な力が必要なのです。
※参考 「計数」獲得を支えるもの
計数の獲得には、5つの計数原理(ゲルマンとガリステルが提唱)が関連しています。
1対1対応の原理
集合数のそれぞれの要素には、一つの数詞しか割り当てられない
安定した順序の原理
数詞はいつも同じ順序で配列されなければならない(数唱)
基数の原理
最後に唱えた数詞がその集合全体の数をあらわす
抽象性の原理
計数の手続きはどんな集合にも適用できる
順序無関連の原理
集合の中の要素はどのような順番で数えてもよい
幼児期に大切なことは、数を理解することです。
ものの数を数えたり、多少を比べたり、数量順に並べたりなど、数の体験を多く積むことが、数の理解につながります。
1年生になる前に、生活の中で体験学習を重ね、算数に強い子を育てたいですね。
数の理解のために家庭でできること
くり返しになりますが、大切なのでもう一度。幼児期に育てたいのは、真の意味での「数の理解」です。
数の理解を促すために、家庭でもすぐにできそうな方法を紹介します。
身近にある数字探し
カレンダー、時計、お店のチラシ(品物の値段)、レシート、お菓子の袋、リモコン、テレビ欄など、生活にはたくさんの数字があります。
数字に目が向く声掛けをし、子どもが興味を示した数字を一緒に言いましょう。数字を指さしながら言ってみるといいですね。
食事の配膳のお手伝い
食事の配膳は、数の学習に最適です。お手伝いには数に触れるチャンスがたくさん詰まっています。
忙しい時の子どもの手伝いは二度手間になることもあるかもしれませんが、算数のお勉強と思ってできるだけ多くの体験をさせてあげてほしいです。幼児期の実体験が、後の算数のセンスを育てます。
例)
・家族4人分のスプーンを用意する
→たくさんある食器の中から、4本を取り出す(計数)
・コップにストローを挿す
→コップ1個に対しストロー1本を割り当てる(1対1対応)
・上から2段目の棚にある皿をとる
→食器棚の最上段を起点にして2段目を考える(順序数)
・家族4人にクッキーを2枚ずつ配る
→クッキー2枚×4人分を体験する(かけ算の基礎体験)
お店屋さんごっこ
ごっこ遊びが好きな子は多いですね。
その中でも、お店屋さんごっこは数が関係するやり取りが多く含まれる遊びです。
「トマトください。」「はいどうぞ」といった品物のやり取りだけでなく、数を絡めた会話を意識するだけで、ごっこ遊びが算数学習に早変わりです。
「トマトはいくつありますか?」「トマトとみかんは全部で何個ですか?」「きゅうりを3本ください。」「50円です。」など、子どもの年齢や能力にあったやり取りをしてみてください。
量感覚を育てる体験
算数では、量に関する学習も行います。
単位の換算、面積や体積など難しい内容が目白押しなため、つまずく子が多いようです。
小学校でつまずかないため幼児期にできること、それは量感覚を養っておくことです。量感覚を養うには、量に関する実体験を重ねることが有効です。
量体験の例
・コップにお茶を注ぐ
→「少し/半分/いっぱいいれてね」など量に関する言葉を使う(量の言葉の理解)
・荷物持ちを手伝う
→買った品物を持つ。子ども用にバッグを用意して、500mLペットボトル、500gの砂糖など無理のない量を持たせる(単位の理解の基盤)
・茶碗を大きい順に重ねてしまう
→家族の茶碗の大きさを比較し系列化する(量の系列化)
最後に
就学前の幼児は、まだ勉強と遊びの区別が曖昧です。つまり、遊び感覚でで楽しく学ぶことができる素晴らしい時期です。大人からするとうらやましいですね。
まずは、身近にある数に親しむことから、周囲の人と一緒に楽しく数の学習を始めましょう。
幼児は体を使って学ぶことも得意なので、生活の中で実体験を重ねながら数の理解を促すことが効果的です。
幼児期に「数っておもしろいな」という感覚が持てるといいですね。
算数に関するポジティブなイメージを持って入学した子は、きっと算数の授業も楽しく受けられるのではないでしょうか。
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